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第3回 山本博先生のスペシャルワイン情報【山梨県】
2012.09.24 イベント情報
 山本博先生から 企画に寄せてスペシャル情報 ♪ 
 ≪第3回≫ 山梨県ワイン情報編









  ワイン王国山梨は現在八十軒を超すワイナリーがあるが、率直に言ってその実情は玉石混交。選ぶのはそう簡単ではないが、いろいろな意味で注目のところを紹介しよう。やはりワイン造りの中核、勝沼に行くことになる。勝沼地区は東京から行って最東、一番手前になる。交通の便はJR「勝沼ぶどう郷駅」。周辺を山に囲まれた盆地でその北側のへりをJR線が走り、南側に高速道路(中央道)と並行して旧甲州街道もある。駅のすぐ近くに立派な「シャトー勝沼」があるがこれは敬遠。
「サントリー・登美の丘」。甲府駅の西手に有名な昇仙峡があり、その奥手に鎮座している。いろいろ歴史があり国産ワイン誕生と発展を轍とともにしてきた。丘陵の南斜面に150ヘクタールの畑があり、頂上の展望台と下の醸造所の間は200メートルの標高差があり、土壌や日照条件に応じて数品種のブドウを栽培している。展望台からの眺望は絶景。醸造所と熟成庫はいづれも格式があって立派。見学客が多いので見学システムは完備。きちんとした食堂もある。
「シャトー・メルシャン」。巨大な醸造所があり近代的な設備は完璧。かつては見学客に親切と言えなかったが今は受け入れ体制も整った。メルシャンの場合は、歴史的事情があって隣りが甲州市の所有する宮光園という、日本の本格的ワイン醸造のルーツを知ることができる資料館になっている。これは必見。また醸造学の研究を長年続けていた関係もあって醸造技術面で知りたいことがあれば説明してくれるからここへ行くと学がつく。なおメルシャンは長年自社畑を持たなかったが、今は長野県の上田市丸子地区(旧丸子町)に20ヘクタールの立派な自社畑をつくった。
 「マンズワイン」ここも大手、国道411号線を塩山駅方面へと向かう途中に山梨県内で最大の規模を誇るマンズワイン勝沼ワイナリーがある。バーベキューハウスもあって受け入れ態勢完備。現在は勝沼では普及ワインの製造に専念していて、高級ワインのソラレス・シリーズは長野県小諸ワイナリーで傑出したワインを出している。
 大手に次ぐワイナリーとして、「原茂」「中央葡萄酒」「丸藤葡萄酒」の御三家が優れたワインを出している。「原茂ワイン」は地元生産者のまとめ役的存在の老舗で、建物も名主邸的な和風建築。庭にはブドウの巨木があり枝が庭中に拡がっている。醸造施設は古風で地味。建物は二階は夫人が経営する小粋なカフェになっていて、ここからの展望は素敵。「中央葡萄酒」は町はずれの等々力にあり蔦におおわれた古風な建物(本社事務所)があり、二階は小ぎれいなレセプション兼テスティングルームになっている。大きな醸造所は現代設備がが完備したもので本社建物の間合いにある。ここの特色は訪問客の対応をシステム的に取り組んで来たことで視察希望の客には特別の解説・接客係がいて、醸造所・畑(鳥居平・菱山)まで同伴して多方面の解説をしてくれる。なお中央葡萄酒は韮崎に広大な垣根仕立の畑を持つ「ミサワ・ワイナリー」も経営し、特に甲州ワインの栽培醸造に力を入れている。
 「丸藤葡萄酒」は勝沼バイパスの南側、山よりの藤井にある老舗。当主の大村春夫はボルドー大学で学んできただけあって研究熱心。ワインの銘‘‘ルバイヤート‘‘は詩人 日夏 耿之介が命名してくれた。醸造設備は古くてオンボロのようだが、それから異色かつ傑出したワインを造り上げるのだから大村の腕は確か。建物内に小さな応接室があり大村がそこに陣取って熱心にワイン論を語ってくれる。なお近くにある垣根仕立ての畑でワイン専用品種を栽培している。なおここは年に一度醸造所の中で行う蔵コン(ルバイヤートワイナリーコンサート)を実施している点でも異色。
 「勝沼醸造」。ここも勝沼の老舗の一軒。民家を使った事務所があるが、倉を利用したテイスティングルームを新設。規模・売上等もかなりのもので対外的にも名が通っているが、出すワインについては毀誉相半。近くに「風」というレストランも経営。 「シャトー・ルミエール」ここも老舗。旧名は「甲州園」。先代の塚本俊彦は自他共に許す論客で国際的に知られていた。ここの建物の中に古い醸造施設が残り、近くに垣根仕立ての畑がある。現在、養子の木田茂樹が出色のワインを出すようになった。社屋内に素敵なフレンチ・レストラン「ゼルコバ」がある。
 「白百合醸造」国道411号線(旧甲州街道)沿いに広い駐車場とモダンな建物がある。このオーナー内田夫妻は、ワイナリーは訪れて楽しいところでなければという信念の持ち主で、広いレセプションルームはいろいろ工夫をこらしたワイン関係用品が展示されている。 建物のすぐ裏がブドウ畑で見学できる。最近は醸造陣の努力があってワインの品質が頓に向上している。
 「サッポロ勝沼ワイナリー」 サッポロビールは昭和49年創業百年を記念してワイン部門の進出を決定。勝沼にワイナリーを興した。敷地一万平方米で二階建の建物を建てた。規模としてはマンズとメルシャンに次ぐ。醸造設備はいづれも近代的なもので管理システムも完備している。原料のブドウをすべて農協を通じて購入した事とビール会社の体質も関係し、低価格ワインを大量生産せざるを得なかったため名声はあがらなかった。ただ平成29年頃から方針が変わり、突然国産ワインコンクールで賞を取るようになった。ここはブドウの品質向上、品種拡大などについて地道な研究を続けていたのが実ったかもしれない。完全に脱皮したこのワイナリーは大手の仲間入りするのも近い将来だろう。なお社屋の裏手の畑で各ブドウ品種の実験栽培を行っているから、これを見せてもらうのは良い勉強になる。
 「シャトー酒折」JR中央線で甲府の駅に近くなると右手の丘に異色な建物が目に入る。これは洋酒輸入の木下インターナショナル(東部)が日本ワイン市場参入を決意して新築したワイナリー。醸造設備は近代的に完備したもの(建物もモダンで屋根のルーフデザインは鮮やかなもの)ワイナリーのそばにそう広くない畑がある。二階の広いレセプションルームから南アルプスを展望できる。ワインは目下試行錯誤で品質向上に取り組んでいるから近い将来成功するだろう。
 「機山洋酒工業。」塩山の奥に快川和尚が‘‘心頭滅却すれば、火も自ずから涼し‘‘と喝破して火あぶりになった有名な恵林寺がある。この近くにあるのが機山ワイナリーで温和で発酵科学を学んだ土屋幸三夫妻がはったりやケレン味のない誠実なワインを造り続けている。県外ではあまり知られていないが、勝沼のワインのひとつとして無視できない存在。 「勝沼ドメーヌQ」 これは番外的ワイナリー。甲府駅の裏から勝沼インターに抜けられる国道140号線沿いにレストラン・ボルドーがある。ボルドーワインが好きだった久保寺孝夫が、ブルゴーニュワイン好きになり本業のかたわらワイン造りに挑戦した。今は山梨大で学んだ息子の孝男がミニ・ワイナリーを新設し、本業の方は結婚式場が大成功。流行っている。ワインの方は異色のものを創り出そうと懸命である。

追伸:
ファッションメーカー「JUN」のワイナリーであるシャトー・ジュン(勝沼)と1990年設立の新しいフジッコワイナリー(勝沼)マルス穂坂ワイナリー(韮崎)、そして甲州市勝沼町営「ブドウの丘」も書くべきだったかもしれない。また苗木専門の植原ブドウ研究所(甲府)も書きたかったがくたびれた。


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